へらへら日記

物足りない日常にへらへら、怪しい読書にへらへら、激しい映画にへらへら、美味い飲食にへらへら、楽しい旅行にへらへら、そんな感じの自己満足日記。

読書覚書2014 #10


「風の中のマリア」
著者 百田尚樹
めらめら度★★★★☆
20140416WED-20140428MON

影法師」に続いて、ジムで顔見知りのエアロビ奥さんから貰った本、その5。百田さんの著作は、これで3冊目になるが、読めば読むほど、その着眼点、その文章力、その創造性に驚かされる。放送作家あがりの禿頭オヤジが、こんなにも素晴らしい物語を立て続けに生み出していたなんてッ! しかも、ジャンルを超越しているから凄いよなァ。どれも芯が通っていて、ちょっと毒あって、そして何より面白い。

モンスター」で整形美人の悲哀を描き、「影法師」で武士の生き様を描き、そして今作では、オオスズメバチの生態を描いている。まさか、昆虫記とはねェ。なんて広い振り幅だろう。当然、昆虫たちを擬人化して描いているのだが、人間的な価値観を押し付けた擬人化ではない。同族で殺し合い、同族を喰らう昆虫たちの生態をリアルに描きつつ、その生の営みの強さと儚さを物語に昇華させているのだ。

動物ドキュメンタリーみたいにリアルな生態を描いているのに、冒険小説のようなワクワクもあるんだよなァ。昆虫に、言語的なハッキリした意思の疎通なんてあるワケがない。でも、本能的な行動を言語化したら、きっと、こんな風なのかも、そう信じられる物語なのだ。昆虫の本能的な行動をドラマチックなフィルターで透過させている。働き蜂マリアの30日余りの生涯が劇的で熱く、そして何より美しい。

昆虫の世界を擬人化した薄っぺらいファンタジーとは比べ物にならないぐらい面白かった。なにより、ハチ目の特異な生態が強烈だ。女王蜂が心臓で、働き蜂が手足で、巣そのものが一個の生命体なのだろう。働き蜂が生殖機能のないメスで、母に変わって妹たちを育てるって、凄い仕組みだよなァ。正に、女王の帝国である。幼虫が肉食なのに、成虫が幼虫の出す唾液と樹液だけで生きているとは…。

CSの動物チャンネルで蜂のドキュメンタリーを観た事があったので、蜂の生態について、結構、詳しいつもりだったんだけど、知らない事だらけだった。ミツバチよりもアリの方がスズメバチに近いとか、オスが生殖にしか役に立たないとか、驚きの連続だ。ホント、ハチ目って不思議な生物だなァ。絶妙な擬人化で物語を展開しながら生物の神秘に迫った傑作である。禿頭オヤジに魅了されっぱなしだぜ。


講談社「風の中のマリア」596円